広告代理店の乗り換え手順|引き継ぎ確認10項目と切替時の注意点

目次
広告代理店の乗り換えは、原因の切り分け、契約の確認、アカウント権限の確保、記録の回収、新旧の並走、切り替え後の評価の順に進めます。解約の連絡から始めると、引き継ぎに必要な権限や資料がそろわず、配信や数字の比較に影響が出やすくなるからです。所有権の見分け方、媒体ごとの引き継ぎ、学習データの考え方、切替時期に成果を落とさない注意点を説明します。
01広告代理店の乗り換えを決める前に確認すること
SO Technologiesが2023年に公開した調査(過去に代理店を変更した企業の439件)では、乗り換えのきっかけは他社からの提案が30.8%、定期的な見直しが23.2%、前の代理店への不満が17.3%でした。乗り換え先を選んだ理由では手数料の安さが44.9%で最多です。変更した企業のみの調査のため市場全体の傾向ではありませんが、不満だけが理由ではないことがわかります。
一方で、乗り換えても解決しない問題もあります。次の表で、問題がどこにあるのかを整理してみてください。
| 感じている問題 | 代理店の変更で解決しやすいか | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 返信や作業が遅い、ミスが多い | しやすい | 担当の変更で解決できないか |
| 次の打ち手の提案がない | しやすい | 自社から成約データや目標を渡しているか |
| 素材の更新が少ない | 内容による | 契約の本数の範囲か、自社の承認で止まっていないか |
| CPAが高い | 原因による | 計測、LP、受け皿の問題でないか |
| 件数はあるが成約しない | しにくい | 商談や受け皿の流れを誰が見ているか |
| 手数料が高い | 内容による | 範囲をそろえた比較か |
公開されている代理店の案内でも、成果の不振が運用以外(LP、計測、営業の導線)にある場合は代理店を替えても改善しないと指摘されています。乗り換えの動機が明確なら、新しい代理店に伝える課題もはっきりします。
「乗り換えない」という選択も比べる
担当者の変更、範囲の変更、一部だけの切り離しで済む場合もあります。例えば、運用はそのままで素材だけ別の会社に頼む、判断だけ社内に戻す、といった方法です。乗り換えには手間がかかるので、問題を解決できる最小の変更を一度考えておくと判断しやすくなります。
02アカウントの所有権を確かめる
乗り換えの難しさの多くは、所有権の問題から生まれます。まず、今の状態がどれに当たるかを確かめます。
| 状態 | 見分け方 | 乗り換えの難しさ | 取るべき行動 |
|---|---|---|---|
| 自社が所有、代理店に権限を付与 | 自社の管理者で権限の一覧を確認できる | 低い | 新しい代理店に権限を渡し、旧代理店の権限を外す |
| 代理店が所有、自社に閲覧権限 | 権限の編集ができない、代理店の名前で所有されている | 高い | 移管の可否を確認し、できなければ新規作成を計画する |
| 代理店のログイン情報を共有 | 自社で管理者を確認できない、2段階認証の送信先が不明 | 高い | 誰の名義か、認証先と支払い名義を確認する |
| 自社に権限なし、レポートのみ | 管理画面を見たことがない | 最も高い | 閲覧権限の付与を最初に依頼する |
公開されている代理店の解説でも、代理店が契約上アカウントを所有している場合、開示や移管に応じないことがあり、過去のデータやリターゲティングリストを失う可能性があると説明されています。契約書にアカウントの扱いが書かれているかを最初に確認してください。
媒体ごとの確認ポイント
媒体によって、権限の仕組みも移管の方法も違います。
| 媒体 | 確認すること | 公式情報でわかること |
|---|---|---|
| X | 広告アカウントの作成元ハンドルとアカウント管理者 | 広告アカウントは作成元のハンドルにひも付き、作成元がアカウント管理者となる。管理者はマルチユーザーログインで権限を付与できる |
| Meta | ビジネスポートフォリオの所有元、パートナーとして渡している権限 | フルコントロールを持つ人がパートナーにページや広告アカウントのアクセスを渡せる。全権または一部の権限を選べる |
| TikTok | ビジネスセンターの所有、資産の共有の状況 | 広告アカウントの移管には申請と承認が必要で、条件があり、利用できないアカウントもある |
Xの場合:今回確認できた公式ヘルプでは、広告アカウントを別のハンドルへ移す手順は見つかりませんでした。代理店のハンドルで作られている場合は、Xのサポートに確認します。新しい広告アカウントを作る場合、公式によると既存のキャンペーンは自動ではコピーされず、Ads Editorで一括の書き出しと取り込みができます。
Metaの場合:公式ヘルプによると、広告アカウントを所有できるビジネスポートフォリオは1つだけで、別のポートフォリオが所有するアカウントは自社のポートフォリオに追加できず、代わりにアクセスをリクエストする形になります。既存の広告アカウントをポートフォリオに追加すると、その追加が永続的なものとなり、削除や別のポートフォリオへの移動ができなくなる場合があるとも案内されています。代理店のポートフォリオが所有している場合は、移せない可能性も見込んで代理店とMetaのサポートに確認し、難しければ新規作成を計画します。1か月以上前に着手するよう勧める代理店の案内もあるので、早めに動いてください。データセットやカタログも、広告アカウントとは別に確認します。
TikTokの場合:公式ヘルプによると、移管にはアカウントの状態や請求の条件があります。移管中は動いているキャンペーンが止まり、手動で再開が必要です。ピクセルやオーディエンスなどのリンク済み資産は、受け取り側が事前に権限を得ていないと自動では移らず、会社をまたぐ移管では資金も移りません。機能が使えないアカウントもあるため、担当者に確認しましょう。
03広告代理店を乗り換える6つの手順
手順1:現状と目標を数字で書き出す
CPA、CVR、獲得件数、成約につながった割合を月別で書き出します。後で切り替えの前後を比べるための基準にもなります。
手順2:契約を確認する
解約予告の期限、最低契約期間、違約金、精算のタイミング、アカウントと制作物の扱いを確認します。公開されている解説で一律の期間は確認できません。実際の契約書の条件で決まります。
手順3:権限と記録を確保する
自社が管理者として確認できる状態にし、必要な記録を回収します。公開されている代理店の解説では、権限と資料の確保を先に済ませ、解約の連絡を最後にする順番を勧めています。解約の連絡の後では、引き継ぎが契約外の作業になり、協力を得にくくなるためです。権限の確認は通常の業務として依頼できますし、契約上の義務である通知の期限は守ってください。
手順4:新しい代理店を選ぶ
同じ情報を渡して提案を受けます。新しい代理店には、切り替え後の最初の30日に何をして、何をしないのかを具体的に聞きましょう。
手順5:並走期間を置いて切り替える
権限の追加、計測の確認、配信中の広告の把握を、旧代理店が動いているうちに行います。公開されている案内では、新旧の体制が重なる期間の目安を約1か月としています。これはSNS運用代行についての一社の目安なので、契約と配信規模に合わせて調整してください。
手順6:切り替え後に評価する
切り替え直後は数字が揺れることがあります。評価の開始時期を決めておき、手順1で書き出した基準と比べます。
04引き継ぎで確認する10項目
旧代理店から受け取るものと、自社で確かめるものを次の10項目にまとめました。契約の範囲に入るかどうかを確認し、解約の話の前に依頼しておくと進めやすくなります。
- 1. アカウントの所有者と権限の一覧:誰がどの権限を持っているか
- 2. 支払い方法と請求の名義:代理店のカードや請求まとめの場合、切り替え後の支払いをどうするか
- 3. 2段階認証の送信先:代理店の端末やメールになっていないか
- 4. 計測タグとイベントの一覧:Xピクセル、Metaピクセル、タグマネージャーの所有者と設定内容
- 5. 成果の定義:どのイベントを成果として数えているか。切り替え前後でそろえる
- 6. オーディエンスの一覧:作成元のデータ、除外の設定、共有の状況
- 7. 配信の設定と履歴:キャンペーン構成、予算配分、変更の履歴
- 8. 過去のレポートと生データ:月次レポートと管理画面からの書き出し
- 9. 検証の記録:試した訴求と結果、効かなかったもの、配信の判断基準
- 10. 制作物と元データ:画像、動画、LP、編集前のデータと、その利用の範囲
検証の記録は特に価値があります。管理画面の数字はアカウントに残っても、なぜその訴求を試したのか、なぜ止めたのかは、担当者の頭の中にしかないことが多いからです。
旧代理店への依頼文の例
次の文は、そのまま使える形にした例です。社名や項目は自社の状況に合わせて変えてください。
05学習データはどこまで引き継げるのか
「学習データを引き継ぐ」という言い方には、実は複数の意味があります。ファイルとして渡せるものではないので、分けて考えます。
| 引き継ぎたいもの | 同じアカウントを使い続ける場合 | 新しいアカウントを作る場合 |
|---|---|---|
| 過去の配信履歴と数字 | 管理画面に残る | 書き出しの範囲でのみ記録として残る |
| キャンペーンの設定 | 残る | 媒体のツールで取り込めるものもある(Xは自動コピーなし) |
| 計測のイベント | 残る | 計測の設定を別途確認する必要がある |
| オーディエンス | 残る | 所有元のデータと媒体の条件を確認する |
| 配信の最適化の状態 | 変更の内容による | 新しいキャンペーンは改めて蓄積が必要 |
| 検証の知見 | 記録があれば残る | 記録があれば残る |
媒体の学習は、変更でやり直しになることがある
Metaの公式ヘルプでは、広告セットの学習はおよそ50件の最適化イベントを目安とし、大幅な編集のあとに学習が再開される場合があるとしています。大幅な編集とは、広告セットの一時停止や、最適化イベント、オーディエンス、クリエイティブの変更で、入札や予算の変更も大きさによって当てはまることがあります。
つまり、代理店の交代そのものより、担当者が変わった直後に構成を大きく変えることのほうが、学習に影響しやすいと考えられます。なお、権限の付け替えが学習に与える影響や、Xの学習の仕組みの詳細は、今回の公式情報では確認できませんでした。
新しい代理店が作り直しを提案したとき
公開されている代理店の解説では、構造が大きく崩れている、計測が整理できない、所有権が旧代理店にある場合には、作り直しを検討するとしています。理由がはっきりしているなら作り直しも選択肢です。理由を聞いて、「これまでの配信の何を残すのか」「作り直しで止まる期間はどのくらいか」を確認しましょう。
06契約で確認すること
解約と精算
解約予告の期限と、最低契約期間の起算日を確認します。月末で切り替えたつもりでも、予告期限を過ぎていて翌月分が発生することがあります。代理店が広告費を立て替えている場合は、未請求の広告費と、最後の月の手数料の計算も確認してください。
制作物の権利
見落としやすいのが制作物です。文化庁のFAQでは、契約書や事前の取り決めがない場合の裁判所の傾向として、対価の支払いだけでは著作権の譲渡までは認めず、一定の範囲の利用許諾にとどめることが比較的多いと説明されています。また、著作権法第61条第2項により、譲渡の契約で第27条と第28条の権利を譲渡の対象として明記していないと、それらは譲渡した側に残ると推定されます。
広告の素材を別の代理店で改変して使うなら、契約書で権利や利用の範囲を確認します。曖昧なら、旧代理店に利用範囲を確認して記録に残しましょう。個別の判断が必要なときは、専門家への確認をおすすめします。
新しい契約で同じ問題を残さない
新しい契約では、アカウントは自社所有とする、終了時の権限の扱い、計測の所有者、制作物の利用範囲、検証の記録を共有することを、最初に書面で決めます。次に見直す時期が来たときの負担が大きく変わります。
07切替時期に成果を落とさないための注意点
切り替え時に数字が揺れることは、公開されている案内でも共通して指摘されています。完全には避けられなくても、振れ幅を小さくすることはできます。
| 注意点 | 理由 | 進め方 |
|---|---|---|
| 繁忙期や大型の施策の直前を避ける | 新しい担当者が把握する前に大きな判断が必要になる | 公開されている案内でも、繁忙期直前の切り替えは避けるよう勧められている |
| 配信を止める日を事前に決める | 空白があると、機会を失い、学習にも影響するおそれがある | 旧代理店の停止と新代理店の開始の日を1枚の表にする |
| 最初の30日は大きな変更を控える | 計測と配信の安定を確認する期間が必要 | 公開されている案内の一例では、30日は安定、60〜90日で改善を広げる流れを示している |
| 成果の定義を変えない | 前後の比較ができなくなる | 定義を変えるなら別の期間として記録する |
| 予算を急に増減しない | 配信が不安定になりやすい | 増やすなら安定後に段階的に |
| 素材の供給を止めない | 引き継ぎの間に古い広告が流れ続ける | 切り替え月の素材の担当を明確にする |
広告だけでなく、LPやLINEなどの受け皿も同じ時期に変えると、数字が動いた理由がわかりません。切り替えと同時に全部を新しくしたくなるものですが、少なくとも最初の30日は変える場所を絞るのが無難です。
切り替え後の評価の目安
公開されている案内の例を参考にすると、次のような段階で見るとわかりやすくなります。期間は目安で、配信規模によって変わります。
- 最初の30日:計測が正しいか、配信が安定しているか、報告の中身はどうか
- 60〜90日:検証が計画どおり進み、前の期間と比べて変化があるか
- それ以降:成果の件数とCPA、成約への貢献
08よくある質問
乗り換えにはどのくらいの期間がかかりますか?
公式に決まった期間はありません。契約の解約予告の期限と、所有権の状況で大きく変わります。所有権の移管が必要な場合は、解約の1か月以上前に動き始めるよう勧める代理店の案内があります。新しい代理店の選定期間も含めて、余裕を持って計画してください。
旧代理店がアカウントを渡してくれない場合はどうすればいいですか?
まず契約書の条項を確認し、書面で依頼します。それでも難しければ、自社で新しいアカウントを作る前提で、取得できる範囲の記録を集めます。新しいアカウントでは過去の配信履歴を使えない可能性があるので、最初の検証期間を長めに見ておくと安全です。
切り替え中は広告を止めるべきですか?
自社所有のアカウントで権限を付け替えるだけなら、配信を止めずに進められることが多いと考えられます。ただし、TikTokの移管のように媒体の手続きでキャンペーンが止まる場合があるので、媒体ごとに確認します。移管のために止めるなら、再開の手順と日付を決めておきます。
手数料が安くなるなら乗り換えるべきですか?
同じ作業範囲での比較なら検討の価値があります。範囲が減っているなら、その分の作業を誰が担うかを確認しましょう。調査では手数料の安さが選ぶ理由の最多でしたが、乗り換え後に満足度が最も伸びた項目は改善施策の提案(5.9ポイント増)でした。切り替えの手間と一時的な不安定さも含めて判断してください。
09まとめ
- 乗り換えの前に、問題が運用にあるのか、計測や受け皿にあるのかを切り分ける
- 所有権、契約、権限、記録を確保してから解約の連絡に進む
- 学習データは種類ごとに考え、構成を大きく変えるかどうかを慎重に決める
- 制作物の権利は報酬の支払いだけでは移らないと考え、契約で確かめる
- 繁忙期を避け、新旧の並走と変更の絞り込みで、切替時期の振れ幅を抑える
Lic.では、広告アカウントや計測、LP、LINEの情報を社内で把握できる状態を保ちながら、運用を分けずに設計することを大切にしています。
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まだ具体的に決まっていない段階のご相談も歓迎です。
参考
- Web担当者Forum「約8割の広告主が「3年以内」に広告代理店を変更。乗り換え先を選ぶポイントは?【SO Technologies調べ】」 https://webtan.impress.co.jp/n/2023/05/01/44757
- X Business「Multi-user login FAQ」 https://business.x.com/en/help/troubleshooting/multi-user-login-faq
- X Business「Ads account management」 https://business.x.com/en/help/account-setup/account-login-and-setup
- X ヘルプセンター「Ads Account creation」 https://help.x.com/en/business-and-advertising/ads-account-creation
- Meta Business Help Center「Give a partner access to business assets in your business portfolio」 https://www.facebook.com/business/help/1717412048538897?locale=en_GB
- Metaビジネスヘルプセンター「Meta Business Suiteでビジネスポートフォリオに広告アカウントを追加する」 https://www.facebook.com/business/help/915885887059947
- Meta Business Help Center「Last Significant Edit」 https://www.facebook.com/business/help/942374239243867
- Meta Business Help Center「About learning limited」 https://en-gb.facebook.com/business/help/269269737396981
- TikTok Business Help Center「Transfer ad accounts in Business Center」 https://ads.tiktok.com/help/article/transfer-ad-accounts-in-business-center
- 文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html
- e-Gov法令検索「著作権法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
- 文部科学省「文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録[資料3]」 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05072901/003-6.htm
- TaTap「SNS運用代行の乗り換え手順|引き継ぎ資料と失うもの【2026】」 https://tatap.jp/knowledge/sns-agency-switching/
- StockSun「広告代理店をリプレイス(乗り換え)すべき4つのタイミング!選び方や注意点を解説」 https://stock-sun.com/column/advertising-agency-replacement/
- キャククル「広告代理店のリプレイスで失敗しない判断基準と切り替え手順」 https://www.shopowner-support.net/customer_attraction_information/online/listing/switchingagency/





