広告予算の決め方|適正額がわかる3つの計算式

目次
広告予算の決め方の基本は、広告予算を「いくら使えるか」ではなく「何件の成果を、いくらで取りたいか」から逆算して決めることです。「この金額なら正解」という相場はなく、同じ月10万円でも、商材の利益や成約までの流れによって、十分なこともあれば、まったく足りないこともあります。
予算を決めるための3つの計算式、媒体やテストへの配分の考え方、そのまま使える予算計算シート、予算を増やす・止めるときの判断表、よくある失敗を順に紹介します。逆算の材料を先にそろえれば、予算の金額にも、増やす・止める判断にも根拠が持てます。
01広告予算を「なんとなく月10万」で決めるとうまくいかない理由
予算を手元の資金や「他社もそれくらいだから」で決めると、次のような問題が起きがちです。
- 成果の基準がない:1件いくらなら成功なのかが決まっていないため、結果を見ても良し悪しが判断できない
- 件数が足りず判断できない:成果の件数が少なすぎて、偶然なのか実力なのかがわからない
- 配信の学習が進まない:多くの広告媒体は、成果の件数をもとに配信を最適化するため、件数が少ないと配信が安定しない
- 増やし方がわからない:うまくいっても、どこまで増やしてよいかの上限が決まっていない
たとえばMeta広告のヘルプでは、最適化に使うコンバージョンは1週間に約50件発生するものを選ぶことが推奨されています。予算が小さすぎると、この件数に届かず、配信が安定しないまま「広告は効かない」と結論づけてしまうことがあります。
02予算を決める前にそろえる4つの数字
逆算に使う数字を、先にそろえておきましょう。正確でなくても、仮の数字で構いません。
| 数字 | 意味 | どこで調べるか |
|---|---|---|
| 客単価(または1件あたりの売上) | 1人のお客様から得られる売上 | 販売データ、見積もりの平均 |
| 粗利率 | 売上のうち、原価を除いて残る割合 | 経理データ |
| 成約率 | 問い合わせや資料請求から、実際に契約・購入に至る割合 | 営業の記録、CRM |
| 獲得したい件数 | 月にほしい成果(購入、問い合わせなど)の数 | 売上目標、営業の対応できる件数 |
問い合わせや資料請求が成果の場合は、その先の成約率がわからないと、1件にいくらまでかけられるかが出せません。営業の記録をさかのぼって、大まかな成約率を出しておきましょう。
03計算式1:目標CPAから逆算する
もっとも基本的な決め方です。
広告予算 = 目標CPA × 獲得したい件数
目標CPAは、1件の成果にかけてよい広告費の目安です。まず赤字にならない上限(限界CPA)を出し、そこから確保したい利益を差し引いて決めます。
| 項目 | 例(オンライン講座の申し込み) |
|---|---|
| 客単価 | 50,000円 |
| 粗利率 | 60% |
| 1件あたりの粗利(限界CPA) | 30,000円 |
| 確保したい利益 | 15,000円 |
| 目標CPA | 15,000円 |
| 獲得したい件数 | 月20件 |
| 広告予算 | 15,000円×20件=月30万円 |
問い合わせが成果の場合は、限界CPAに成約率を掛けます。たとえば成約1件の粗利が30万円で、問い合わせからの成約率が10%なら、問い合わせ1件の限界CPAは3万円です。目標CPAと限界CPAの決め方は、別記事「目標CPA・限界CPAの決め方」で詳しく解説しています。
04計算式2:売上目標から逆算する
「来月、広告経由でいくら売上を増やしたいか」が決まっている場合は、売上目標から必要な件数を出し、予算に変換します。
必要な件数 = 売上目標 ÷ 客単価 ÷ 成約率
広告予算 = 必要な件数 × 目標CPA
| 項目 | 例(法人向けサービス) |
|---|---|
| 広告経由の売上目標 | 月300万円 |
| 客単価 | 60万円 |
| 必要な成約数 | 5件 |
| 問い合わせからの成約率 | 20% |
| 必要な問い合わせ数 | 25件 |
| 問い合わせの目標CPA | 2万円 |
| 広告予算 | 2万円×25件=月50万円 |
この計算式を使うと、「売上目標に対して、予算が足りているか」がすぐにわかります。予算が出せない場合は、売上目標を下げるのではなく、成約率を上げる、客単価を上げる、目標CPAを下げられるLPに改善する、といった別の手段も検討できます。
05計算式3:テストに必要な件数から逆算する
初めての媒体や、新しい商品で広告を始めるときは、まだ目標CPAが達成できるかわかりません。そこで最初の数週間は、「判断に必要な件数を集める」ことを目的に予算を決めます。
テスト予算 = 想定CPA × 判断に必要な件数
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 想定CPA(仮置き) | 1万円 |
| 比べたい広告の数 | 3案 |
| 1案あたり判断に必要な件数 | 10件 |
| テスト予算 | 1万円×3案×10件=30万円 |
想定CPAは、似た商材の経験値や、媒体の推定値をもとに仮置きします。テストの結果、実際のCPAがわかったら、計算式1や2で本番の予算を決め直します。
比べる案の数は、予算だけでなく制作の手間でも決まります。案を増やすほど素材の準備が増え、結果が出たあとには次の案を作る作業が続きます。担当者が他の業務と兼務しているなら、続けて作れる本数に合わせて案の数を決めましょう。
06広告予算の配分の考え方
予算の総額が決まったら、どこに使うかを決めます。
「育てる」と「試す」を分ける
すでに成果の出ている広告と、新しく試す広告を同じ予算の中で混ぜると、新しい広告が十分に配信されずに終わることがあります。予算は次のように役割で分けると管理しやすくなります。
| 役割 | 中身 | 配分の目安の考え方 |
|---|---|---|
| 育てる | 成果の出ている媒体・広告 | 予算の中心。目標CPAを守りながら件数を伸ばす |
| 試す | 新しいクリエイティブ、新しいターゲット | 判断に必要な件数を集められる分だけ確保する |
| 挑む | 新しい媒体、新しい商品 | 失っても事業に影響しない範囲で、期間を区切って試す |
割合は事業の段階で変わります。立ち上げ期は「試す」が大きく、成果の型が見えてきたら「育てる」に寄せていきます。
媒体ごとの配分
複数の媒体に出す場合は、媒体ごとにCPAを比べて、成果の良い媒体に寄せていくのが基本です。ただし、認知を担う媒体と、獲得を担う媒体では見るべき数字が違います。認知の媒体を止めたら、獲得の媒体の成果も落ちた、ということもあるため、役割を決めてから比べましょう。
07そのまま使える広告予算の計算シート
社内で予算を相談するときは、次の項目を埋めた表を用意すると、話が早く進みます。
| 項目 | 記入欄 | メモ |
|---|---|---|
| 広告の目的(何を増やしたいか) | 購入、問い合わせ、資料請求など | |
| 客単価 | ||
| 粗利率 | ||
| 成約率 | 問い合わせが成果の場合 | |
| 限界CPA | 1件あたりの粗利×成約率 | |
| 目標CPA | 限界CPA−確保したい利益 | |
| 獲得したい件数 | 月あたり | |
| 本番の予算 | 目標CPA×件数 | |
| テストの予算 | 想定CPA×判断に必要な件数 | |
| 判断する時期 | 開始から何週間後か | |
| 増やす条件 | 例:目標CPA以下が2週間続いたら | |
| 止める条件 | 例:限界CPAを超えた状態が2週間続いたら |
増やす条件と止める条件を、始める前に決めておくことがポイントです。始めてから決めると、結果に引っ張られて判断がぶれます。
08予算を増やす・減らす・止めるときの判断表
| 状態 | 判断 | 進め方 |
|---|---|---|
| 目標CPA以下で、件数も十分 | 増やす | 一度に大きく上げず、段階的に増やしてCPAの変化を見る |
| 目標CPAと限界CPAの間 | 続けて改善 | クリエイティブやLPを改善し、目標CPAに近づける |
| 限界CPAを超えている | 減らす・見直す | 予算を下げ、原因(クリック率、成約率など)を切り分ける |
| 件数が少なすぎて判断できない | 続ける・寄せる | 成果のポイントを手前に寄せるか、比べる広告を減らす |
| 改善を重ねても限界CPAを超え続ける | 止める | 媒体や商品の組み合わせを変えて、別の仮説で試す |
予算を増やすと、それまでより反応の弱い人にも配信が広がり、CPAが上がることがあります。どの程度変わるかは商材や配信の状況によるので、増額後の数字で確かめます。目標の数字にも無理は禁物で、Google広告のヘルプでは、目標コンバージョン単価を平均より大幅に低く設定すると、十分なトラフィックを維持しながら目標を達成するのは難しくなると案内されています。予算と目標の数字は、実績を見ながら少しずつ動かすのが安全です。
予算を増やす前に、受け皿が追いつくかも確かめます。件数が増えると、LPの離脱やLINEの返信、営業の対応が追いつかず、問い合わせから成約までの割合が下がることがあります。そうなると、管理画面のCPAは目標以下でも、計算の前提にした成約率が崩れてしまいます。
09よくある失敗と対策
- 予算を小さく分散しすぎる:媒体や広告を増やしすぎて、どれも件数が足りない。まずは1〜2媒体に絞る
- 初月の結果だけで判断する:学習期間中の数字で止めてしまう。判断の時期を始める前に決めておく
- CPAだけを見て質を見ない:安く取れたリードが成約しない。成約率まで追いかける
- 広告費以外の費用を忘れる:クリエイティブの制作費や運用の手間を含めると赤字になる。利益の計算に含めておく
- 月末に予算を使い切ろうとする:消化を優先して質の低い配信が増える。予算は上限であり、ノルマではない
10よくある質問
少額でも広告は始められますか?
多くの運用型広告は、少額から始められます。ただし、少額だと判断に必要な件数が集まるまで時間がかかります。計算式3で、テストに必要な予算と期間を見積もってから始めましょう。
売上の何%を広告費にするべきですか?
売上に対する比率で決める方法もありますが、業種や利益率、事業の段階によって適切な割合は大きく変わります。比率は目安にとどめ、1件あたりの利益から逆算した金額と照らし合わせて決めるのが確実です。
代理店に依頼する場合、手数料も予算に含めますか?
広告費とは別に、運用の手数料がかかるのが一般的です。利益の計算では、手数料も広告にかかる費用として含めて考えましょう。比べるときは手数料の額だけでなく、社内で運用した場合にかかる担当者の時間と、素材の制作やLPの修正がどこまで含まれるかも並べると判断しやすくなります。媒体が1つで予算も小さいうちは、自社運用で十分なこともあります。
予算は月単位と日単位、どちらで決めますか?
社内では月単位で決め、管理画面では日予算として設定するのが一般的です。月の予算を日数で割って日予算にしますが、媒体によっては日ごとの消化額が日予算を上下することがあるため、月の合計で上限を超えていないかを確認しましょう。
11まとめ
- 広告予算に相場はない。「何件を、いくらで取りたいか」から逆算する
- 計算式1:広告予算=目標CPA×獲得したい件数
- 計算式2:売上目標÷客単価÷成約率で必要な件数を出し、目標CPAを掛ける
- 計算式3:テスト予算=想定CPA×判断に必要な件数
- 増やす条件と止める条件を、始める前に決めておく
予算の根拠がはっきりすると、広告の結果を落ち着いて判断できるようになります。Lic.では、広告運用を始める前に、利益と成約までの流れから予算と判断基準を設計することを大切にしています。
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参考
- Metaビジネスヘルプセンター「最適化イベント」 https://ja-jp.facebook.com/business/help/139628083350822
- Google 広告 ヘルプ「目標コンバージョン単価制のトラフィック量やコンバージョン率の低下に対処する」 https://support.google.com/google-ads/answer/6385155?hl=ja





